【ジャンル】 伝説
【カテゴリ】 大蛇
【 地 図 】 福井県敦賀市明神町
【其の他 】

周囲1,100m、最深深度7m、淡水湖
若狭湾国定公園第2種特別地域
県指定鳥獣保護区特別保護地区

【 概 要 】
其の1
此の池には入るな、泳ぐな、呑むなという禁忌が昔からあった。また、池の魚も捕ってはいけない。
それは此の池に、 大蛇が住んでいる為だという。
ある日、浦底に住む寺男の猪之助が、此の池に行ったきり行方不明になった。
村人たちが探しに行ったが、とうとう見つけることができなかった。
翌朝村の若者が「上がった!上がった!」といって騒いでいるので、
皆で池に向かうと、池の中央で猪之助がうつ伏せに浮かんでいた。
村の者たちは、大蛇の祟りだと恐れたという。

其の2
浦底に猪之助という寺男が住んでいた。
ある日猪之助は禁忌を破り、池に泳いでいたキレイな魚を焼いて食べて行方不明になった。
心配して探しに行った村人の耳に
「帰らんぞ。帰らんぞ。行かんぞ!」という声が聞こえてきた。
それで聞こえた辺りを「きやんだー」と言う小字名で呼ぶようになったという。

【 雑 感 】
敦賀半島の先、明神山にある猪ヶ池に残る伝説です。

上述の2つの話はオチは違うが、猪ヶ池の名前の起源説話である。
猪ヶ池は敦賀でも有名な伝説の一つで、上記の2つ以外にも、大蛇に祟られたという話は幾つか存在している。

この伝説が不気味なのは、大蛇が住んでいる、祟られた言っているにも関わらず、肝心の大蛇が一切出てこないところだ。
日本昔ばなしにありがちな、大蛇が姿を見せたり、何かを告げたりといった事は一切無く、ただ猪之助と云う男が禁忌を犯し、
祟られて死んだ(消えた)という事のみである。

この猪ヶ池がある山は明神山と言い、大昔から木が伐られたことが無いと言う。
明神山と呼ばれるのは、鹿島神社があるからなのだが、 大蛇と言うのは後付けで、それ以前からこの一帯が禁足地だった可能性もある。
だが、鹿島神社創始の経緯やそれ以前の古い言い伝えは分らない。

現在猪ヶ池は国定公園として開放されており、バードウオッチングなどが行えるが、近年は蛇ではなく、熊が出ると云う事で立ち入りが禁じられている。 なので、中の様子は見ることができなかった。

これは困った。伝説紹介の第一回目なのにどんな状態なのか説明できないなんて!
そう思っていたら、なんとこの猪ヶ池に入ったことがあるという人物に会う事が出来た。
それは、、、うちの親父である!
子供の頃、知りあいに連れてきてもらった親父は大胆にも泳いで遊んだという。
しかし、池には自分たちの遊ぶ音以外は聞こえず、水も濁っており、のっぺりとした気味悪さを感じ、直ぐに上がったそうだ。
親父曰く、池には魚はいないと言う。何故か?と聞くと、注ぎ込む川が無いからだと云う。
ホントかよ !と思ったが、 池で泳いで生還した数少ない人物の証言なので載せておくことにする。

うちの親父は、悪運が強かったので何事もなかったが、猪ヶ池では泳がないことをお勧めする。
まぁそんなもの好きはいないか。

 

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